独創どくそう的てきな作風さくふうが評価ひょうかされ、数多かずおおくの作品さくひんを手てがけましたが、多おおくは地震じしんのあとの火災かさいで焼やけてしまいました。

知人ちじん夫妻ふさいのもとをたずねると、残のこされた作品さくひんを見みせてもらうことができました。

「絵えを描えがくのが好すき」輪島わじまで職人しょくにんに

地震じしんからひと月ひとつき半はんが過すぎた2月つき16日にち。

石川いしかわ県けんが発表はっぴょうした死者ししゃの名簿めいぼに、その名前なまえはありました。

島田しまだ怜奈れいな（れいな）さん、36歳さい。

大だい規模きぼな火災かさいが起おきた輪島わじま市しの「朝市あさいち通どおり」の自宅じたく兼けん工房こうぼうで被災ひさいし、安否あんぴ不明ふめいの状態じょうたいが続つづいていました。

兵庫ひょうご県けん出身しゅっしんの怜奈れいなさん。

小ちいさいころから絵えを描えがくのが好すきで、16年ねん前まえからは輪島わじま市しでまき絵まきえの技術ぎじゅつを学まなび、その後そのご職人しょくにんとして独立どくりつ。

数すう多おおくの作品さくひんを手てがけてきました。

生前せいぜんの作品さくひんは

怜奈れいなさんの作品さくひんを販売はんばいしていた知人ちじんのもとをたずねました。

器うつわなどに漆うるしを塗ぬる塗師ぬりしの吉田よしだ宏之ひろゆきさん（62）とひとみさん（62）夫妻ふさいです。

2人にんは朝市あさいち通どおりにあった店みせで、怜奈れいなさんの作品さくひんを販売はんばいしていました。

多おおくは焼やけてしまいましたが、夫妻ふさいのもとには怜奈れいなさんが手てがけた「漆うるし絵え」など、約やく80点てんの作品さくひんが残のこされていました。

吉田よしだひとみさん

「かわいいでしょう、ほら」

そう言いって見みせてくれたのはこちら。

お客おきゃくさんから最もっとも人気にんきがあったという「五色ごしき鹿しか」のデザインです。

「これはきっと一番いちばん描えがいてもらっていますね。お客おきゃくさんに見みせるとすぐ売うれてしまってなくなってしまうんです。あんまりかわいいので販売はんばいもしたくないんですけど、でも販売はんばいもしたいし複雑ふくざつなんです。手書てがきだから、ひとつひとつ構図こうずも同おなじじゃないんです」

独特どくとくの発想はっそう力りょくで

怜奈れいなさんは輪島塗わじまぬりには珍めずらしい独創どくそう的てきな作風さくふうが高たかく評価ひょうかされた若手わかて作家さっかでした。

吉田よしださん夫妻ふさいは10年ねんほど前まえに初はじめて怜奈れいなさんに出会であったころ、独特どくとくの発想はっそう力りょくに驚おどろいたと言いいます。

「『怜奈れいなちゃん書かいてくれる？』って言いって『書かきます』ってなって、ここに好すきなものを書かいてって言いったら、この構図こうず。この場所ばしょにお相撲すもうさんが現あらわれて、ちょっとびっくりしました。この子こすごいおもしろいことするなって」

その後そのごの作品さくひんにはゾウやハト、それに南米なんべい・ペルーの遺跡いせきのレリーフを題材だいざいに描えがくなど、それまでの輪島塗わじまぬりにはない独特どくとくの感性かんせいが表あらわれています。

「漆うるしに興味きょうみないのに、これを見みてああかわいいって、輪島塗わじまぬりってこんなのなんだと思おもってくださるお客様おきゃくさまはけっこういました。だから怜奈れいなちゃんの漆うるし絵えを見みて輪島塗わじまぬりを初はじめて手てにした人ひともけっこういらっしゃいます。それだけの子こなので、これからもっと忙いそがしくなって、もううちの漆うるし絵え書かいてくれなくなったらどうしようと主人しゅじんと言いっていました。でもそれはそれで怜奈れいなちゃんの成長せいちょうだからね」

それでも怜奈れいなさんは年明としあけからも吉田よしださんと仕事しごとする予定よていで、最後さいごに会あった12月つき23日にちもそのことを話はなしていたといいます。

「来年らいねんも吉田よしださんの仕事しごと頑張がんばります。よろしくお願おねがいします」

吉田よしだひとみさんは、涙なみだながらに振り返ふりかえりました。

「これからどんなわくわくする作品さくひんを描えがいてくれるのか、もっと見みたかったです」

「一目ひとめ見みてすぐわかった」

これからの夢ゆめについても、怜奈れいなさんはこう話はなしていました。

「輪島塗わじまぬりの体験たいけんができる場所ばしょをつくって、多おおくの人ひとに伝統でんとう工芸こうげいを身近みぢかに感かんじられるようにしたい」

吉田よしださん夫妻ふさいのもとには怜奈れいなさんの作品さくひんを譲ゆずってほしいという申し出もうしでが数多かずおおく寄よせられていますが、まずは怜奈れいなさんの両親りょうしんに見みてもらいたいと考かんがえています。

そして、実際じっさいに見みてもらう日ひが来くるのを前まえに、まずはSNSで作品さくひんの写真しゃしんを投稿とうこうしました。

兵庫ひょうご県けん三田みた市しに住すむ父親ちちおやの富夫とみおさん（73）は、実じつは怜奈れいなさんがプロになってからの作品さくひんをほとんど見みたことがないと話はなしています。

それでも、作品さくひんの写真しゃしんを見みた時とき、すぐにわかったということです。

「絵えを描えがくことが大好だいすきな娘むすめで、今回こんかい残のこされた作品さくひんを一目ひとめ見みてすぐに『怜奈れいなの絵えだ』とわかりました。どんな仕事しごとをしていたのか全まったくわからなかったですが、楽たのしく仕事しごとしていたことがしのばれます」

そして、こう話はなしていました。

「作品さくひんを手てに取とって見みてみたいです。多おおくの人ひとに使つかってもらえれば娘むすめも喜よろこぶと思おもいます」

（能登のと半島はんとう地震じしん取材しゅざい班はん　尾お垣かき和幸かずゆき）